2011年3月12日土曜日

研究会の目的

テーマ:
情報通信技術の途上国貧困層への開発インパクトに関する実証分析
¨ケニアのM‐Pesaを事例として一
概要:
 ケニアから始まった、携帯電話を活用した送金サービス・システムであるM-Pesa の経済的、社会的インパクトの分析を通して、情報通信技術が貧困の削減にどの程度、寄与するのかを実証的に明らかにする。
 本研究の目的は、BOP (Base of the Pyramid)と呼ばれる貧困層の人々が、携帯電話を始めとする情報通信技術(ICT)を活用することで、生活の変革がどのように可能かを検証することである。電気の通じていない至る場所で使われている携帯電話、電話線が整備されていない村々にも広く存在するインターネット・カフェ。明らかにICT が貧困層の生活に大きなインパクトを与えている。
 本研究においては、具体的には携帯電話を活用した送金サービス・システムであるM-Pesa を主たる研究対象として取り上げ、BOP へのインパクトを分析する。ケニアから始まり、タンザニア、アフガニスタン、南アフリカ、インド、エジプトへと広がりをみせているM-Pesa の経済的、社会的インパクトの分析を通して、ICT が貧困の削減にどの程度、寄与するのかを実証的に明らかにする。
 これまで開発援助機関やNGO によって貧困削減の努力がなされてきたにもかかわらず、いまだに40 億人とも推計される貧困層、いわゆるBOP 層が存在する。この厳しい現実が意味するところは何か?旧来の枠組みでの貧困削減には明らかに限界があり、新たな手法が求められているということであろう。そこで、最近関心を集めているのが、貧困層へのビジネス・アプローチであり、いわゆるBOP ビジネスと呼ばれているものである。1998 年にプラハラッド教授とハート教授によって着想されたBOP という概念は、貧困社会の抱える課題をビジネスによって解決していこうというアイディアを主柱とし、従来には全くなかった斬新な手法として登場した。
 このビジネス・アプローチに、およそ10 年前より、国連を始めとする国際機関、欧米先進国政府、欧米多国籍企業がこぞって着目し、その促進を図ってきた。BOP ビジネスの領域は多岐にわたるものの、中でもICT を活用したビジネスは、貧困層の生活改善に大きなインパクトを与える可能性を秘めている。この観点から日本が果たすべき役割、日本企業の取り組みのあり方を探求するという本研究のもつ今日的意義は極めて大きいといえる。